ゆかた３

その場に全くそぐわない二人が呉服売り場にいた時間はたったの３０分。

あれこれ悩む仗助にしびれを切らした承太郎が「俺が選ぶ」と言うなり

店員を呼びつけ浴衣、帯、下駄、何から何まであっという間に揃えてしまったのだ。

 

「ああそれから・・・」

 

店員に何やら問うている恋人から離れて売り場をうろうろしていると、

 

「おい、済んだぜ」

 

 

会計を済ませたらしく、大きい紙袋を提げた承太郎に声をかけられる。

 

「あ、ありがとうございます！結構かさばるんスね、浴衣って」

「二人分だからな」

「・・・じょう、たろうさんも着てくれるんスか？」

 

てっきり、自分の分だけかと思っていた。

承太郎の浴衣姿を見られるとあって、その後の仗助は超ゴキゲンで。

 

この後、何が待っているかも知らずにきゃっきゃと喜ぶ叔父に、

年上の甥は笑みが洩れるのを抑え「オラ行くぞ」とすたすた歩き出すのだった。