猫と承太郎さん

朋子、お友達と旅行中。ってなればやっぱり。

１

オフクロが友達と旅行に行ったんで、承太郎さんを家に呼んでみた。

「承太郎さん、猫大丈夫でしたっけ？」
「・・・？」
「いや今うちに猫がいるんスよ、オフクロの友達の。

　怖がりみてーで、エサの時以外は全然姿もみせねーンスけど」

 

「ああ・・・嫌いじゃねぇ」
「良かったー」
「引っ掻かれんのには慣れてるしな」

・・・・・・！！

 

 

２

 

後から行く、と言われて先に家に帰った。

どれ猫は・・・いねぇ。っつっても気配は感じるから、隠れてるだけか。
とりあえずトイレ掃除して、水変えてエサ入れて。

そうこうしてる間に承太郎さんの車の音。

待ちきれなくて、ドアの外にお出迎えしに行く。

こーゆーの、犬っぽいって言われちまうんだよなー・・・

 

さっき別れたばっかりなのに、もう嬉しくてしょーがねー。

だって、だってよ、『おれんち』に承太郎さんが・・・

あーもうダメだ、尻尾ぶんぶん振ってる犬みてー。

耐えらんない、承太郎さんが車から降りてきたら飛びつきたい。

 

「・・・よう」

「・・・ッス」

 

近所の目もあるから、ガマンしたけど。

車止めから玄関までの距離がやけに遠い。

ようやくドアを開けて、それがバタンと閉まった瞬間。

 

「・・・ぁ」

 

抱き寄せられて、キスされる。

気持ちいい。こうして欲しかった。嬉しい。

承太郎さんの背中にしがみついて、目をつぶって全身で承太郎さんを感じる。

 

「は、ん・・・じょ、たろさん」

 

唇が離れた瞬間、息を吸い込みながら承太郎さんを呼ぶと。

 

「・・・いい子だったから、ご褒美だ」

 

すっげーかっこいい顔で薄く笑って、ちゅっと音を立ててもうひとつ、キスしてくれた。

やばい・・・もう、犬でいい。幸せすぎて死ぬかも・・・

 

 

３

「テキトーに座っててくださいねー」

「ああ・・・」

 

承太郎さん、キョロキョロしてる？あ、そっか。

 

「猫ッスか？」

「む・・・」

「なかなか出て来ないんスよー・・・あそびたかった？」

 

意外。それは猫好き！かわいいッス承太郎さん！！

 

「見つけたらクレDで捕獲して持ってきてあげるッスから」

「・・・名前」

「へ？」

「猫の名前。何てンだ。」

 

呼ぶの？呼んじゃうんスか？承太郎さんが？

 

「あぁ～何てったかなァ・・・」

 

承太郎さん、スミマセン。覚えてません。

正直承太郎さんがこんな猫好きとは思わなかったから。

おれだってキライなわけじゃないけど、足元に寄ってきてごろにゃん、てしてくれれば

よしよしってしてやってもいいかなーって位で。

だからそんなこっち見ないで。うう、責められてんのか？おれ。

 

「・・・コーヒー淹れてきまーす・・・」

 

そーっと後じさりするおれを見て、承太郎さんは『やれやれだぜ』と呟いた。